オーディンの舟葬 解説・感想

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今回は「オーディンの舟葬」1巻を紹介します。

1話目は無料でこちらで読めます。
https://comic-zenon.com/episode/14079602755133251644

ヴァイキング×ダブル復讐劇

物語の舞台は11世紀初頭のイングランド。
主人公は2匹の狼に育てられた少年ルーク。
ルークを保護して育てくれた神父がヴァイキングの白髪のエイナルに殺され、
ヴァイキングに復讐するルークの物語。

「オーディンの舟葬」ストーリー・解説

生首リフティング

主人公ルークの目の前でヴァイキングの白髪のエイナルに、
育ての親の神父クロウリーの頭でリフティングしている衝撃のシーンで始まります。
大切な人をただ斬り殺すよりも、大切な人を殺して笑いながら遺体を弄んだ方が、
主人公の復讐、かたきを討つ動機が強くなり、読者もこいつは許してはいけないと
思わせるシーンなので最初のつかみはいい感じです。

作者のよしおかちひろ先生は連載用の企画にこのシーンを描いたとき、
周りから生首リフティングはやめたほうがいいと言われましたが、
描くのをやめずに連載用の企画に通したら連載できるようになり、
作者もこのシーンがなければ連載を取ることは出来なかったとX(旧Twitter)に
書かれていました。

ヴァイキングの襲撃が激化した時代


物語の舞台は11世紀初頭のイングランド。
デンマーク王国のヴァイキングによるイングランド王国への襲撃が激化した時代です。

この時代の資料を調べたり集めたりするのは、
大変だと思いますが、是非がんばってほしいものです。

イングランドの小さな村にヴァイキングが襲ったところから物語が始まります。

年老いた村人の孫がヴァイキングに殺されて、その孫の墓の前でみんなが集まっている時に、
神父のクロウリーが「悪をもって、悪に報いず 私たちは平和のために働きましょう」と言います。

このセリフは聖書のローマ人の手紙12章の1節と思われます。

祈っている時に、近くの牛小屋で騒ぎがあり、そこへ行ってみると、
牛小屋を荒らしている2匹の子犬の狼と少年がいて、
その少年を見たクロウリーは怪我をしていることに気づきます。

村人たちは牛小屋を荒らされて怒っていて、
村人の一人が少年たちの方に石を投げたら狼に当たり、
クロウリーが止めに入りますが、
少年が怒ってクロウリーの腕に噛みつきます。

村人たちはクロウリーを助けるために少年を棒で殴りますが、
クロウリーは少年を守ります。

クロウリーは少年の境遇を察して優しく接しますが、
少年は優しくされたことが無かったので動揺します。

動揺している少年は多勢に無勢で村人たちに教会に囚われてしまいます。

教会でクロウリーは少年に自己紹介してから、
この教会で預かると言います。

クロウリーはお腹を空かした少年たちに食事を与えますが、
少年は食べずに2匹の子犬の狼たちに食べさせます。
子犬の狼たちは少年のことを心配して、
少年に食べ物をあげて、少年は泣きながら食べます。

翌朝、少年は伸びきった髪をクロウリーに切られ、
服を着させられます。

クロウリーが少年になぜ村に来たのか理由を聞き、
少年が説明します。

理由を聞いたクロウリーは少年に、
この村を略奪したヴァイキングのことを教えます。

ヴァイキングの事を教えてから、
クロウリーが少年にルークという名を与え
一緒に暮らします。

「ルーク」という名前を調べてみたら
ラテン語で「光をもたらすもの」
という意味でした。

ヴァイキングの襲撃、再び

村で暮らして1年後
村人たちに受け入れられたルークが、
クリスマス用の食材を狩りで手に入れ、
村へ帰っているところ、
村では教会でクロウリーと村人たちが、クリスマスの準備をしながら
ルークの帰りを待っていたら、ドアを強く叩く音がしたので、
クロウリーがルークが帰って来たと思い、ドアを開けた瞬間、
ヴァイキングの白髪のエイナルに剣で刺されてしまいます。

白髪のエイナルが再びこの村に来た理由は、
デンマーク王国のスヴェン王にイングランド人の首を30人ほど
刈って来いと命令されて来ました。

再び村はヴァイキングの襲撃に遭います。

村に帰ってきたルークは村がヴァイキングに襲撃されているところを目撃して、
急いでクロウリーや村人たちを助けに行きます。

ルークは負傷しているクロウリーを見つけ助けようとしますが、
クロウリーはルークに急いでここから逃げろと言います。

ルークはクロウリーを置いて逃げることが出来ず、
一緒に逃げようとします。

一緒に逃げ、あともう少しで安全な所に到着しそうな時に、
クロウリーはエイナルに斧で首を切り落とされます。

戦狼のオーディン

ルークが切り落とされたクロウリーの頭を持って動揺しているところを、
2匹の狼フラウとフィーがエイナルからルークを守ろうとしますが、 
エイナルが持っていた松明の火で狼たちに攻撃し怯んだ隙に、
ルークを捕らえ、松明の火でルークの右目を焼き失明させます。

エイナルがルークにとどめをさそうとしたところで、
撤収の合図があり、ルークを殺さずエイナルは撤収します。

撤収時、ここで冒頭の生首リフティングシーンが入ります。

ヴァイキングたちが撤収した後、ひとり取り残された
ヴァイキングが居て、クロウリーの遺体を漁っていたら
十字架を見つけ取ろうとした瞬間、倒れていたルークに腕を掴まれ
殺されてしまいます。

この時、ルークは白髪のエイナルとヴァイキングたちに復讐を誓います。

のちに”戦狼のオーディン”と恐れられる復讐鬼とヴァイキングの
凄惨な戦いの幕が開きます。

10年後

10年後、イングランドを襲うヴァイキング。
女性がヴァイキングに襲われている時、ルークがその女性を助けるため、
ヴァイキングに攻撃し、殺す前にヴァイキングに白髪のエイナルの居場所を
聞いてから、首を切り落として殺します。

ここで10年後の時代の説明が入ります。
1013年にデンマーク王国のスヴェン王自ら大規模な軍隊を率いて
イングランドへ侵攻を開始。
この時イングランドの国王はノルマンディへ逃亡し、
イングランド各地は急速に制圧されたと説明が入ります。

デンマーク王国 双叉ひ髭王 スヴェン登場

幻覚が見えるお香を焚きながら巫女と性行為中のスヴェン王に
部下が戦狼(ルーク)が白髪の男(エイナル)を探すため
ヴァイキングたちを殺し回っていると報告して指示をもらいます。

性行為を終えたスヴェン王は巫女に預言を聞きます。

この時代、ヴァイキング社会では巫女が尊重されていて、
舞踊や薬草、性的な儀式などでトランス状態を引き起こし、
預言を行ったと言われています。

巫女はこう予言します。
「オーディンは騙る 不吉な狼
 やがて我々を飲み込む
 巨大な影となるだろう」

巫女はスヴェン王にオーディン(ルーク)を
殺して欲しいとお願いします。

部下がスヴェン王にエイナルがそのオーディンの首を
取ろうとしていることを報告します。

部下の報告を聞いたスヴェン王は不吉な預言をした巫女を殺し
部下にエイナルに戦狼の首を獲って来いと命令します。

匂いでヒトの性格がわかる。徐々に見えなくなる左眼。

場面は変わり、ルークたちが隠れ家で休憩しながら、
戦う準備をしています。

準備を終えて、横になったら寝てしまい、ここで回想シーンになり
ルークが匂いでヒトの性格がわかるエピソードが入ります。

白髪の男(エイナル)からは、なにも匂いが無かったことを
思い出して飛び起きます。

ここでルークの左眼が徐々に見えなくなってきてることがわかります。

戦狼ルークと白髪のエイナルの戦い

オックスフォード テムズ川近郊でエイナルとヴァイキングたちは
カラスたちが舞う中、狼煙を上げながら戦狼(ルーク)をおびき寄せて迎え撃とうとしています。

この時、エイナルは髪を赤く染めて神父の姿に変装しています。
その理由が戦狼が十字架か神父を見たら逃げ出したと噂があったからです。

エイナルは神父の姿で戦狼たちを罠にはめようとします

エイナルたちの所で舞っていたかカラスがルークに居場所を教えます。

北欧神話にはオーディンに付き添い様々な情報を伝えるために、
世界中を飛び回っている一対のワタリガラス、
フギンムニンが登場します。

ルークたちはヴァイキングたちを襲います。
橋の真ん中でヴァイキングに囲まれるルークですが、
ルークの一撃で10人以上のヴァイキングを殺します。

神父に変装したエイナルが戦狼(ルーク)に
ヴァイキングたち殺さないように説得します。

戦狼ルークは神父(エイナル)の喉元に槍の切っ先を突きつけますが、
この時、ルークは神父の正体が白髪の男(エイナル)だと気付き、
エイナルも戦狼(ルーク)の正体が10年前に殺し損ねたガキだと気付きます。

ルークが怯んだ隙にエイナルがルークの槍を掴み、ナイフで刺そうとしますが、
ルークは槍を捨て橋から川へ飛び込み逃げます。
エイナルたちは逃げたルークを追跡します。

なんとか逃げたルークは狼たちと合流した後、
神父が白髪の男なのか、確認に行きます。

戦狼オーディンの正体

ルークと狼たちは分かれて逃げて、
木の上に逃げたルークはエイナルたちに追い詰められます。
エイナルは仲間のヴァイキングたちに狼を追うように指示を出しますが、
ヴァイキングたちは命令を聞かずに帰ろうとします。

ひとりのヴァイキングがみんなスヴェン王に気に入れられようと、
体を張っているわけでは無いと言い、その場を立ち去ろうとします。

エイナルが戦狼の正体を言おうとしたら、
別のヴァイキングがエイナルの髪を掴み、
逃がしたのはお前が神父のコスプレをしていたからだと言った瞬間、
エイナルに斧で腕を切り落とされてしまいます。

怒ったエイナルは森に火をつけ、
戦狼の正体、エイナルが10年前にスヴェン王の命令でイングランドに報復した日に、
首を刎ね損ねたガキだと言います。

白髪のエイナルの過去

エイナルの少年時代。

少年時代のエイナルは白髪では無く、
父親譲りの亜麻色の髪でした。

エイナルの父親はノルウェーの王オーラヴで、
母親はデンマーク王国スヴェンの妹タイアです。


オーラヴはスカンジナビアの
キリストの千年王国をつくると言います。

この時代、スカンジナビアではキリスト教化が進んでいました。
8世紀末頃から北欧のヴァイキングたちがイングランドを何回も襲撃していて、
困ったイングランドとその周辺諸国は、ヴァイキングに略奪行為などやめさせるために、
ヴァイキングのキリスト教への改宗を試みました。

若きオーラヴは港などを襲撃していましたが、
途中、船が嵐に遭ってヴェンドランド(ポーランド)に寄ったとき、
ブリスラフ(ヴェントランド一帯の王)の娘ゲイラと出会い、
ゲイラと交際して結婚しましたが、数年後ゲイラは病気で亡くなってしまいます。

オーラヴは悲しみに暮れていて、ヴェンドランドにはもう留まっていることができず、
略奪の旅に出ます。
数々の島を襲撃しているときに、オーラヴは噂で凄い預言者がいると聞き、
会いに行って預言者から預言を告げられ、告げられた通りのことが起こったので、
オーラヴはその預言者から洗礼を受け改宗しました。

数年後、ノルウェーの王になったオーラヴはスカンジナビアをキリスト教化、
キリストの千年王国をつくる野望がありました。

場面は変わり、船の上でオーラヴとスヴェンが戦っているシーン。

ここの戦闘シーンはスヴォルトの海戦でしょう。

この時、タイア王妃とエイナル王子の目の前でオーラブ王は海へ身を投じます。

その後、タイア王妃とエイナル王子は身を隠していましたが、
タイア王妃は目の前で夫を亡くしたショックで寝たきり状態で、
エイナルは母親の看病をしていたところ、タイア王妃の兄スヴェン王に家を
見つけられてしまいます。
スヴェン王たちが家に入ってくる前に、エイナルは母親が眠るベッドの下に逃げます。
スヴェン王は妹のタイアを吊るして鳥に食わせろと部下に命令します。

吊るされて鳥たちに食われている母親を前にしたエイナルは、
人生の全てをスヴェン王を殺し、父と母の無念を晴らすために捧げます。
母の十字架にかけて

ルークとエイナル、再び対峙

エイナルに森に火をつけられ、酸素が薄くなり、
ルークは酸欠状態で木から落ちてしまい、
落ちた先に白髪の男(エイナル)が待ち伏せをしています。

この時、エイナルがルークたちの村襲った理由が、
父と母の仇を討つため、スヴェン王に近づくためにやったことだとわかります。

ルークが炎の中に白髪の男(エイナル)を見つけ、
そこに入り対峙します。

対峙したルークは白髪の男(エイナル)から匂いがなく、
何を考えているか読めず恐れていたら、
突然、エイナルに剣で切り付けられます。
そのままエイナルの攻撃が続き、ルークは逃げ周り続けます。

ここでルークの回想シーンが入り、
昔、クロウリーから怖いのはわからないからという教えを思い出し、
怖いと感じたらなんでもいいから声に出すようにしなさいと、
言われた事を思い出します。

ルークはクロウリーに教わったことを思い出して、
狼みたいな遠吠えみたいな声をだします。

逃走中のヴァイキングたちが、ルークが吠えた声に驚き、
立ち止まっていたら、イングランドの密偵に殺されてしまいます。

再びルークとエイナルの戦闘シーン
ルークはエイナルが神父の姿に化けたことに怒ります。
エイナルは聖書の一節を言ってルークを挑発します。

ルークはエイナルに攻撃し、その時にエイナルが首からさげていた
母親の形見の十字架を嚙みちぎり、そのまま地面に吐き捨てます。

ルークとエイナルの戦いを近くで見ている、イングランドの3人の密偵。
イングランドの密偵の目的が戦狼(ルーク)捜していることが、
ここでわかります。
ひとりの密偵がエイナルを殺すため、矢を放ちます。

その矢がエイナルに当たりそうになった瞬間、
ルークが矢を掴み、密偵たちがいる方向へ投げます。

ルークは、すでにイングランドの密偵たちがいることに気づいていました。

イングランドの密偵たちが作戦変更して、戦狼(ルーク)を助けるのではなく、
奪取することにします。

ルークはイングランドの密偵たちに復讐の邪魔をされた事を怒っていたら、
エイナルに隙を突かれ、胸にエイナルの攻撃を受けてしまいます。

攻撃後、エイナルがオーディンと異名をルークを敬意を表して、
舟葬で送り出してやるが、首は乗せてやれないがと言って、
第一巻は終わります。

「オーディンの舟葬」1巻の感想

戦狼のルークと白髪のエイナルのW復讐劇が、どのような展開になるか楽しみです。
ルークとエイナルが共闘してスヴェン王を倒し、その後決闘で決着をつける展開になるのでしょうか。

題材がヴァイキングなので、資料を調べたり、集めたりするのが大変だと思いました。

歴史モノを描くのは面倒くさい

著者も昔、投稿用に歴史モノの漫画を描いたことがありますが、
とにかく資料を調べたり集めたりするのが大変でした。

その時、描いていた漫画の題材が、
1950年代の西ドイツを舞台にしたナチハンターもので、
当時の建物や建物内の間取り、服装、髪型、家具や小道具など作画用の資料を
探すのが大変で、ネットや書籍など作画用の資料を探しても欲しい角度の画像や写真が無くて、
何回もイライラしてしんどかったです。

2014年に本屋大賞を受賞した
ローラン・ビネの小説「HHhHプラハ、1942年」でも
資料を集めたり調べるのが大変と書かれていて、
欲しい資料があっても高くて買えないとか、絶版になっていて手に入らないとか、
翻訳されていなかったりして、漫画家を目指している人、漫画家になっている人や
クリエイターの人は、共感できることや勉強になることが書かれているので、
読むのをおススメします。

あと今回紹介している漫画と同じヴァイキングを題材した
幸村誠先生のヴィンランド・サガでは
外国人の方にデンマークには高い山はないとツッコミを入れられていました。

プロの漫画家でも、こういうミスがあるので、
歴史モノ、実在するものを描くのは大変です。

作者のよしおかちひろ先生

作者のよしおかちひろ先生について調べましたが、
今作の「オーディンの舟葬」が商業誌初連載です。

漫画家になった経緯がX(旧Twitter)で投稿されていたので紹介します。

サッカーが好きみたいで、「オーディンの舟葬」第一話冒頭の生首リフティングシーンに、
生かされていますね。

作画の映像もX(旧Twitter)で投稿されていて、筆で6,7割描いているみたいです。

月刊誌で連載していて、ほぼ一人で描いているみたいなので、
大変な事が多いと思いますが、完結まで描いていただきたいです。

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