今回紹介する漫画は「路傍のフジイ」です。
SNSの広告などで、この漫画が気になっていて、好きな漫画家さんが面白いとオススメしていたので、買って読んでみたら、おもしろかったので紹介します。
1話目はこちらで読めます。
あらすじ
40過ぎで非正規社員の独身おじさん、フジイ。
性格は真面目、見た目は冴えない感じで、職場では空気のような存在。
しかし、フジイと関わった人たちは生き方や考え方を変えられてしまいます。
見所・感想など
フジイの生きる道
フジイと同じ会社に勤めている同僚の田中は毎日がつまらなく、うつ気味で、自宅は飲み終わったペットボトルや空き缶、食べ終わったカップ麺などのゴミだらけの部屋ですが、同僚の40過ぎで非正規の独身で友達もいないフジイと比べて、自分の方がマシな人生を送っていると思っていました。
休日の朝、家の近所の自販機で飲み物を買いに行ったら、フジイがいて、なんでこんな所にいるんだ?と思い、後をつけてみたら、フジイは池がある大きな公園に行き、その池にいるカメを見ていて、後をつけていた田中はアホらしくなって帰ろうとしますが、いきなりフジイが池の中に入りカメを捕まえます。カメを捕まえて何かをしているフジイの周りに人だかりが出来ていて、田中も近づいてみると、カメの甲羅に卑猥な言葉が落書きされていて、フジイがその落書きを布でゴシゴシと消していました。
その後、フジイは環境学習交流施設に行き、周りは家族連れでしたが、そのことを気にすることはなく、展示物を見てから、ひとりでケーキ屋に行きケーキを買っていましたが、田中はフジイをつけ回しているのがアホらしくなり帰ろうとしたら、近くで酔っ払いのジジィと若者が揉めていて、フジイが仲裁に入りますが、ジジィに殴られて倒され、ジジィはブツブツ言いながら、そのままどこかへ行ってしまいます。田中は倒れたフジイを助け、フジイの家に行くことになります。
初めてフジイの家に入った田中は、部屋は汚く、アイドルやアニメのポスターがいっぱい貼っていると思っていましたが、普通の部屋で驚きます。
フジイは先ほど買ったケーキを食べようとしたら、ケーキにハッピーバースデーのプレートが乗っていて、それを見た田中は一人でバースデーケーキは虚しい人だと思いました。
田中はフジイの部屋にある本棚を見て、小説や昆虫の飼い方の本、DIY、水彩画などいろんな本があり、部屋に絵が飾っていたので、田中は「この絵を描いたのはフジイさん?」と聞いたら、はいと答えて、今ケーキを食べているお皿も自分で焼いたものですと言い、田中はフジイに「人生、楽しそうですね」と言ったら、フジイは笑顔で「はい、楽しいです」と答えます。田中は皮肉のつもりで言いましたが、フジイは強がっているだけと思いました。
フジイの座っているソファの近くにギターがあり、田中が「弾けるんですか?」と聞いたら、フジイは「弾き語りができるようになりたくて練習していた」と言い、田中は「プロを目指しているんですか?」と言ったら、フジイはまったくと言い、田中は「いろんなことをやって、なにかなりたいものはなかったんですか?」と聞いたら、フジイは少し考えて「不老不死」と答えます。
田中が困惑していたら、フジイが不老不死になりたい理由は、やりたいこと、知りたいことがたくさんあって永遠に生き続けたら良いなと言います。
田中はフジイが本気なのか、ふざけているのかわからなくなり、とりあえずギターで弾き語りが聞きたいと言います。
フジイは嫌がりもせず、弾き語りをします。
田中はフジイのギターも歌も下手で、あと絵も陶芸も下手くそでしたが、楽しそうに生きていて、最初フジイのことがつまらない人間だと思っていましたが、田中は自分自身がつまらない人間だと気付かされ、涙を流しながら、フジイの下手な弾き語りを最後まで聞きます。
帰り、田中はフジイに「また遊びに来てもいいですか?」と言い、フジイは「お待ちしております。」と言って別れます。
その夜、田中は不思議な夢を見ます。
家の近所の商店街に田中が興味を持たずに素通りしてきた人達や、すっかり忘れていた人達が登場して、田中はなぜか全員の名前を覚えていましたが、彼らは田中のこと忘れていましたが、田中はそれで満足だったところで目を覚まします。
田中はゴミだらけだった部屋を片付けてから出勤しました。
フジイの人生観
全員の望みが叶うことは無理かもしれません。でも、幸せに生きることは可能じゃないでしょうか
会社の飲み会の後、フジイは同僚の女の子と駅まで一緒に向かっている途中、ちょうど歩道橋を渡っていたら、下にイベント終わりの人たちが大勢、駅に向かっていて、その様子を見ていたフジイに同僚の女の子が「みんな楽しそうですけど、何人が本当に幸せなんでしょうね」と言い、フジイは「全員が幸せだといいんですが」と言ったら、同僚の女の子は「そんなのは無理で綺麗事だと思います」と言い、フジイは「全員の望みが叶うことは無理かもしれません。でも、幸せに生きることは可能じゃないでしょうか。」と言います。
無理してまで、人に好かれようとは思いません。
フジイと同僚の矢部が一緒にクライアント先に打ち合わせに行くことになり、その帰り一緒に晩飯を食べることになり、フジイは矢部の行きつけの店へ食べに行くことになります。
その店では矢部の友達や知り合いが大勢いて、最初の方はフジイに話かけていましたが、時間が経つと、誰も話かけることが無くボッチになり、矢部に帰ることを伝えると、矢部が心配して、「つまらなかったですか?」と言ったら、フジイは「楽しかったです。」と言いますが、全然楽しそうに見えなかったので、矢部がもっと笑ったほうが、みんなと打ち解けて、好かれると思いますよと言ったら、フジイは「無理して、人に好かれようと思いません。」と言います。
矢部は「僕は多少無理してでも、人に好かれたいです。」と言い、その後に「意外に頑固者なんですね」と言って別れます。
今でも友達と思っています。
フジイが通っている陶芸教室に多田という新入生が入ってきて、多田は友達をつくるために入って来ましたが、フジイが全然友達を作ろうとしないので、多田は「友達がほしくないんですか?」と言ったら。フジイは「友達はいますよ。」と言います。多田が驚いていると、フジイは「その時々で同じ何かを共有して、それきり連絡先も知らず、二度と会わない人もいますけど、今でも友達と思っています。」と言い、多田は「それって友達ですか?むこうはそう思ってないのでは」と言い、フジイは「そうかもしれません」と言います。
ラッキーアイテムの紅茶よりも人気ナンバー1のホットコーヒー
休日。フジイはバッティングセンターや本屋などに行きますが、どこに行っても良くないことが起こり、ブラブラしていたら、よく当たるという占い屋を見つけ、そこで占ってもらいます。
そこで占ってもらったら、全体的にあまり運が良くないと言われ、ラッキーアイテムの紅茶を飲むと運が開けると言われます。
フジイは喫茶店に行き、紅茶を頼もうとしますが、メニュー表に炭火コーヒーが一番人気と書かれていて、周りを見たら、みんなコーヒーを飲んでいて、フジイも飲みたくなり、紅茶を注文せず、ホットコーヒーを注文し、飲んで満足します。
路傍の意味
「路傍」という意味や読み方がわからなかったので、調べてみたら、読み方は「ろぼう」で、意味は道のほとりや、道端という意味でした。
あと「路傍の人」というのもあり、こちらの意味は道を歩いていく人、道ですれ違う人、自分とは無関係な人などの意味がありました。
他のおじさんの日常系漫画
他のおじさんの日常系漫画が読みたい!という方は、ここで紹介する漫画を読んでみてはいかがでしょうか。
「孤独のグルメ」
まずは「孤独のグルメ」です。
テレビドラマ化され、そして映画化にもなった超有名な漫画です。
あらすじは、個人で輸入雑貨商をしている主人公が、フラッと立ち寄った店で飯を食べるだけの話ですが、なぜか面白い漫画です。
あと主人公が店主とモメて関節技の「アームロック」をかける話もあります。
テレビドラマ版は見ていて、原作の漫画を読んだことがない人は、ドラマ版と漫画版では主人公のキャラが違うので、読んでみてはどうでしょうか。
「カラスヤサトシ」
「カラスヤサトシ」は月刊アフタヌーンで連載していた、作者の実体験を基にした4コマ漫画です。
仮面ライダーなどのガシャポンのフィギュアを、自作の専用リングでノック式ボールペンで弾いてリングから落とす遊びが趣味で、しかもファイトマネーが発生する仕組みを作り、勝敗やファイトマネーなどパソコンで管理までする凝った趣味の話や、
作者はハマチを食べたら体調が悪くなるのですが、ある日、晩御飯の時、食卓にハマチが置かれていて、作者の母親がハマチと似ているけど違う魚だからと言って、作者がその魚を食べたら、体調が悪くなり、苦しんでいる時に、母親がボソッと「精神的なものやなかったんや」という話や、
他にも、作者の数々の奇行などの話が面白いです。
鍋倉夫先生が漫画家になるまでの経緯
ここでは鍋倉夫先生が漫画家になった経緯を紹介します。
鍋倉夫先生は現在37歳で、小学生の時は「ドラゴンボール」や「スラムダンク」、
「名探偵コナン」などを読んでいましたが、いとこのお兄さんの影響でヤングマガジンやヤングジャンプなどの青年誌も読んでいたようです。
子どもの時は絵が上手い方で、漫画も好きでしたが、漫画は描かなかったと話していました。
しかし将来は漫画家になるだろうと思っていたみたいです。
そして時は過ぎ、大学4年生の時、周りは就職活動をしていて、就職が決まった人もいて、就職活動をしていなかった鍋倉夫先生は危機感を抱いていて、しかもこの時まで漫画をまだ1作も描いたことが無く、そろそろ本気で漫画を描かないとヤバいと思い、漫画道具一式買って漫画を描きます。
なんとか漫画を完成させて、好きな漫画「寄生獣」、「ヒストリエ」の岩明均先生が連載していた「月刊アフタヌーン」に持ち込みします。
講談社の大きな建物へ持ち込みに行き、初めて描いた漫画を編集者に見せましたが、全然反応は無く、ダメ出しも言われ、担当も付くことも無く終わりました。
漫画家になることができず、就職も出来ず大学を卒業することになりました。
この時、鍋倉夫先生は、いつか漫画家になることができるだろうという根拠の無い自信があったみたいで、バイトをしながら2作目を描きます。
1年かけて描いた2作目を再び「アフタヌーン」に持ち込みします。
2作目を読んだ編集者の反応が1作目の時よりも良く、アドバイスもあり、最後に漫画新人賞のアフタヌーン四季賞に出してみましょうと言われました。
この時、鍋倉夫先生は編集者からもらったアドバイスで、3作目はもっと面白い漫画が描けると思い、四季賞の結果が出る前に、3作目の漫画を描き始めます。
ある日、鍋倉夫先生に友達から連絡があり、「四季賞におまえの名前載っているけど」と言われ、確認すると、下の方の賞、奨励賞の所に鍋倉夫の先生の名前が載っているのを見つけます。
鍋倉夫先生は編集者から連絡があるだろうと思っていましたが、全然連絡が無く、ちょうど3作目が完成するところだったので、3作目を持ち込んだ時に聞いてみようと思ったようです。
3作目を編集者に見せたら、凄く反応が良く、四季賞に出しときますと言われ、鍋倉夫先生が「前の四季賞の奨励賞を受賞したんですけど、どうなりましたか?」と言うと、編集者の方が2作目を見た編集者が辞めて、引継ぎが出来ていなかったみたいで、連絡が出来なかったと言われ、すぐに担当を付けますと言われました。
そして四季賞の発表の日。3作目が大賞を受賞しました。
大賞を受賞後、鍋倉夫先生は、もっと漫画を描く技術を身に着けたいと思い、アシスタントなろうと思いました。
ちょうど、その時に小学館の「ビッグコミックスピリッツ」で「アイアムアヒーロー」を連載していた花沢健吾先生がTwitterでアシスタントを募集していたので、応募したらアシスタントに受かり、「アイアムアヒーロー」を手伝うことになります。
アシスタントをしている間、読切や短期連載を描いていて、連載用の企画も何回か出しましたが、連載を得ることはできませんでした。
そして、5年ほどアシスタントをしていた「アイアムアヒーロー」が最終回を迎えます。
次、なにをするか悩んでいた鍋倉夫先生は、連載用の企画を考えます。
大学時代、将棋が好きで「ニコニコ動画」の将棋の動画や、将棋の棋士が好きだったので、将棋を題材にした漫画の企画を作ります。
その企画が連載会議で通すことができ、初連載「リボーンの棋士」でプロの漫画家になります。
もっと詳しく知りたい方は、ニッポン放送吉田アナと鍋倉夫先生の対談番組「マンガのラジオ」をお聞きください。
まとめ
社会学者のマーク・グラノヴェダー氏が提唱する「弱い紐帯の強み」という理論では、価値ある情報の伝達や転職に際しては、家族や親戚、親しい友人といった強い結びつきよりも、ちょっとした知り合いやSNS上だけの付き合いの相手などの弱い繋がりの方が重要という理論で、「弱い紐帯」から得た情報で転職した方が満足度が高いとわかったようです。
「強い紐帯」の人々は、自分と似たような価値観を共有しているため、得られる情報も知っているものが多いですが、「弱い紐帯」の人々は普段関わりがないので、自分の持ってない情報を提供してくれるからということです。
「弱い紐帯」は「強い紐帯」同士を繋ぐ「ブリッジ」として機能し、重要な役割を果たすようです。
あなたの人生のターニングポイントで「弱い紐帯」の人、フジイみたいな人と出会うかもしれません。
おしまい。
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